リクルートの住宅・不動産総合サイトSUUMOは毎年「関東住みたい街ランキング」を発表しています。この4月に発表された2016年ランキングでは、5年連続1位だった吉祥寺が陥落し、恵比寿が1位に躍り出たことが話題になりました。どちらも、いわゆる“おしゃれ”な街であり、東京に住んでいる人ならば、どちらが1位でも納得がいくのではないでしょうか。

 ここで海外に目を向けてみましょう。米国で「もっとも住みたい街」として有名なのは、オレゴン州のポートランドです。西海岸のシアトルとサンフランシスコの間に位置し、人口は約62万人。住民のほとんどは街の中の移動で自動車を使わず、徒歩か自転車、ライトレール(新型路面電車)で移動。環境に配慮したサステイナブル(持続可能)なコンパクトシティとしても、世界的に有名です。

 そんなポートランドのまちづくりに、一人の日本人が関わっているのをご存知でしょうか? 2012年からポートランド市開発局(PDC)で働く山崎満広さんです。米国で経済開発コンサルタントとして活躍していましたが、仕事で訪れたポートランドに惚れ込み、移住を決めたそうです。『ポートランド 世界で一番住みたい街をつくる』(学芸出版社)では、山崎さんが、ポートランドの魅力と、行政と住民が一体となって進められたまちづくりについて詳細に紹介しています。

 同書によれば、ポートランドでは住民と行政がまったく平等の立場にあります。都市開発において重要な決定をしなければならないときには、住民・行政に加え、事業者、大学や病院などの公共機関の四者がそれぞれの利害を調整すべく話し合います。四者とも「環境に配慮した住みやすい街にしたい」という思いは同じ。まちづくりのビジョンを皆が共有していることが、この魅力的な街をつくる最大の秘訣にちがいありません。

 ポートランドは、日本では札幌市と姉妹都市になっています。開拓者によって築かれ、風土も似ていることが姉妹都市締結の理由とのことです。ですが、同じ北海道で、さらにポートランドを思わせるまちづくりに成功した街があります。旭川市に隣接する上川郡東川町です。同町は、地方衰退が叫ばれるなか、この20年で14%も人口を増やしています。『東川スタイル』(産学社)には、美しい写真とともに、同町の特徴的なお店やそこに集う人々の様子、住民たちの共通価値基準(スタンダード)が紹介されています。

 東川もポートランドも、いずれも「住民主体」でまちづくりを進めてきました。しかし、一点だけ違うところがあります。ポートランドでは行政と住民によって、しっかりとした都市計画が行われました。東川の場合は、それほどかっちりとした仕組みづくりが行われたわけではありません。市が、ひょんなことから「写真の町」というコンセプトを打ち出し、それによって住民たちの共通価値基準がつくられました。そこから自然に、「写真の被写体」としてふさわしいようにと、住民が自主的に街を変えていったのです。

 いずれにせよ、美しい街を自分たちの手で作り上げたことは、どちらの住民にとっても誇りになることでしょう。そんな「誇り」が日本中のあちらこちらの地域で見られることを期待したいところです。


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ポートランド 世界で一番住みたい街をつくる山崎 満広 著 (学芸出版社)

●他メディアでも紹介しました●

リーダー不在で成功した、北海道東川町のまちづくり
(ニュースイッチ 情報工場 「読学」のススメ#6 by情報工場)

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