2016年7月末に日本でリリースされたスマホゲーム『ポケモンGO』。ネット行動分析を行う調査会社ヴァリューズの調査によれば、日本国内のインストールユーザー数はリリース3日後には1000万を超え、男性のアクティブユーザー数はTwitterを超えていたそうです。

 8月に入り、一時の熱狂的なブームは鳴りを潜めたようですが、それでも日本中が『ポケモンGO』の虜になっていたことは事実です。
一つのエンターテインメント作品が、これほどの圧倒的な数の人を巻き込んでブームになるのは最近では非常に珍しいことです。たとえば音楽では、国民誰もが口ずさむような大ヒット曲は、近年ほとんど生まれていません。その背景には価値観の多様化があります。そんな状況でも『ポケモンGO』のような特大ヒットが生まれるゲーム産業は、産業として圧倒的な“強さ”を持っているといえるでしょう。

 そんなゲーム産業の歴史を紐解き、ハード、ソフト、プラットフォームの変遷、興亡の歴史を描き出しているのが『日本デジタルゲーム産業史』(人文書院)です。

 本書を読むと、日本のゲーム産業の歴史は、アーケードゲーム、「プレイステーション」をはじめとする家庭用ゲーム、スマホゲームなどによる興亡の歴史であることがわかります。それぞれが主役となる時期に大ヒットが生まれ、人々を虜にしてきました。

 1978年、初めて日本にゲームブームを巻き起こしたのはゲームセンターや喫茶店などに置かれた『インベーダーゲーム』でした。当時『インベーダーゲーム』のゲーム機の卸価格は当初一台46万円だったそうですが、本書によれば1日一台平均2~3万円を売り上げていたそうです。ゲームセンターにしてみれば、ほぼ一ヵ月以内で元が取れる計算になります。

 その後、現在まで続く家庭用ゲーム機の歴史を形づくったのが「ファミコン」です。1985年の年間販売台数は374万台に達しています。中でも『ドラゴンクエスト』は新しいシリーズが発売されるごとに大きな話題となりました。発売日にいち早く遊ぶために、学校を休んで発売日に行列に並び、警察に補導される生徒が後を絶たなかったほどです。販売元のエニックスはこれを受けて、発売日を日曜や祝日に変更したといいます。

最近の家庭用ゲームは『パズル&ドラゴンズ』などスマホゲームに押され気味ですが、2016年10月には頭部にヘッドマウントディスプレイを装着して遊ぶ『プレイステーションVR』の発売が予定されています。VR技術を用いた初の家庭用ゲーム機として、世界的に注目が集まる製品です。きっとこれからも想像もつかないようなゲームが登場し、私たちを虜にしてくれることでしょう。


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『日本デジタルゲーム産業史』小山 友介 著 (人文書院)
『コンソールウォーズ セガ、任天堂、そして時代を決定づけた闘いの物語(原題:Console Wars : Sega, Nintendo, and the Battle that Defined a Generation)』(海外書籍:アメリカ)Blake J. Harris 著(It Books)