『大分断』
タイラー・コーエン 著 | 渡辺 靖 解説/池村 千秋 訳 | NTT出版 | 336p | 2,400円(税別)


はじめに 日本は「現状満足階級」の先駆者だ
1.現状満足階級の誕生
2.移住大国の変容
3.甦る社会的分断
4.創造しなくなったアメリカ人
5.マッチング社会の幸福論
6.アメリカ人が暴動をやめた理由
7.活力を失った社会
8.民主主義の形骸化が進む
9.現状満足階級が崩壊する日
解説 タイラー・コーエンの思想的立ち位置


【要旨】※3,000字のダイジェストのうち、約300字の要旨のみご覧いただけます。

このところ世界を一変するようなイノベーションが少ないと感じることはないだろうか。
シリコンバレーを擁する米国でもGAFAなどの巨大企業が富を独占、民衆レベルでも貧富の格差が固定化するなどの「分断」が生じ、経済が停滞しつつある。
しかも、安定・安全志向で変化を嫌う人々が増えているという。

本書では、「現状満足階級」の台頭と、それによる分断の拡大、イノベーションの減退が生じている米国の現状を分析、それによって起こりうる事態に警鐘を鳴らしている。
現状満足階級とは、移住や転職などの変化やリスクを避け、問題解決に動くことも少ない不活発な人々を指す、著者の造語である。そうした階級が全米を席巻しつつあり、社会に影響を及ぼしていることを、さまざまな統計データなど明確なエビデンスをもとに検証。
その一方で変化の波は防ぎようもなく、金融危機や犯罪の増加などの大混乱が起きる可能性もあることを指摘する。そして日本は「現状満足階級」の先駆者なのだという。
著者は、米国ジョージ・メイソン大学経済学教授、同大学マルカタスセンター所長。「世界に最も影響を与える経済学者の一人」(英エコノミスト誌)であり、著書にいずれもベストセラーになった『大停滞』『大格差』(NTT出版)がある。

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